第9章 俺のだ ☆
陣平くんの彼女になった。
一度眠って起きた時、まさか昨日のあのやりとりは夢だったんじゃないかと思いながら、陣平くんに電話をかけた。
「んー?」
まだ寝ぼけた様子の陣平くんが電話に出た。
当然だ。
まだ朝の6時なんだから。
「じっ、陣平くん!」
「あー?…んだよこんなに朝早く…」
「わたし、陣平くんの彼女になれたんだよね?」
「…お前、まさかそれ聞くためにこんな朝っぱらから電話して来たんじゃねぇだろうな?」
いつもの陣平くんの口の悪さが炸裂するが、わたしには全く響かない。
「そうだよ!?」
「そうだよってお前なぁ…」
呆れたように電話を切ろうとする陣平くんに、わたしは慌てて本心を伝える。
「だって!陣平くんがわたしを好きなんて…
奇跡みたいって言うか…」
「ったく…
そんなんで、俺の彼女やっていけんのか?」
そんな風にサラッと、事実を肯定する陣平くん。
スマート過ぎる回答にわたしは思わず心が躍った。
「や、やってけるよ!
陣平くんの、彼女…!」
「そんな張り切らなくてもいいから。
…今日の夜、一緒に飯でも食うか」
「食う!」
「口悪りぃな。18時にお前の大学まで迎えに行く」
「うん!楽しみ!」
「じゃあ切るぜ?あと10分寝るんだよ俺は…」
そう言って陣平くんは電話を切った。
夢じゃ…ない!!
ベッドの中で、よっしゃ!とガッツポーズをして携帯を抱きしめたわたし。
ずっと夢見てたの。
陣平くんの彼女になりたいって何度も何度も願って、ようやく叶った奇跡がまだ信じられない。
今日の夜、陣平くんに会える。
また明日も、明後日も、陣平くんに会いたいって言っていいんだ。
彼女なんだから!
嬉しさのあまり、ベッドの中でゴロゴロと悶えていると、どさっとシングルベッドの端から床に布団ごと落ちた。
「いった…」
痛い。
夢じゃない、現実だ。
きっとこれは、お兄ちゃんがくれた奇跡だ。
ふとそう思いながら、わたしは学校に行く準備を始めた。