第8章 叶わぬ願いと叶った想い
お葬式が終わり、それぞれが帰路につく中、お姉ちゃんが気を遣ってくれ、わたしと陣平くんは一緒に帰ることになった。
繋いだ手は、まだ固く結ばれたまま。
陣平くんは、優しく手を引きながらわたしのほんの少し前を歩いてくれる。
この時、わたしは陣平くんに告白したっけ。
お兄ちゃんが最後に、陣平くんのこと諦めんなと言ってくれたのを思い出して、勇気を振り絞って告白したよね。
返事はノーだったけど、それでもめげずに絶対好きにさせると宣戦布告した。
だけど、今はもうそんな気力すらない。
だってどうせ、告白しても振られるのは変わらない。
未来を変えることなんて出来ないと、この二日間で痛いほど実感したんだから。
そう思っていると、陣平くんから思いもよらぬ言葉が飛び出した。
「…付き合うか」
「…え…?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
思わず聞き返しながら陣平くんを見つめると、陣平くんはわたしの方へ向き直り、少しだけ微笑みながら言った。
「付き合うか…俺たち」
付き合う…?
「俺たちって…だれ?」
「はぁ?俺とお前に決まってるだろ?」
まさかの展開に、わたしは唖然とする。
そしてついまた奇跡を期待してしまおうとするのを、慌てて冷静になった。
きっと、陣平くんはわたしがお兄ちゃんを亡くして失意の底にいるのを救いたいだけだ。
わたしのこと、好きとかそんなんじゃない…