第8章 叶わぬ願いと叶った想い
あのときと同じ。
陣平くんだ…
陣平くんも、結局4年後に命を落とすの?
最後まで、わたしのことを好きになってくれないまま、死んでしまうの?
そしてわたしは絶望したまま一人で生きていくの?
考え出すともう悲しみが止まらなくて、わたしは何も言わずに泣いた。
「ミコト…萩が悲しむぞ。
お前がそんな顔してたら」
「…わたしのせいだ」
「え?」
「わたしが、あの日お兄ちゃんを家から出さなければ…
現地待ち合わせじゃなくて、ずっとそばで見張ってれば…
そしたら、這ってでも止めたのに」
陣平くんからしたら、まるで意味のわからないことを言ってるだろう。
心配そうにわたしを見ながら言葉を探しているように見えた。
「わたしのせいで、お兄ちゃんが死ん…」
そこまで言った時、陣平くんがわたしの手を引いて腕の中に閉じ込めた。
陣平くんに、こんな風にぎゅ…と抱きしめられたのは、何年ぶりだろう…
懐かしい陣平くんの匂いに、頭がクラクラする。
この人も、失ってしまうの?
今確かに、ここにいるのに…
生きてるのに…
「陣平くんは…いなくならないで…」
「いなくならない」
「ずっとそばにいて…」
そう言って、陣平くんの胸の中でわんわん泣いた。
そんなわたしを、陣平くんが頭を撫でながら抱きしめてくれる。
頭の撫で方が、いつものくしゃくしゃじゃなくて、まるでお兄ちゃんみたいだ。
「ずっと、手繋いでてやるから。
萩に、ちゃんとサヨナラしてやれ。
な?」
陣平くんはわたしの涙を拭いながらそう言って笑ってくれた。