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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第8章 叶わぬ願いと叶った想い




「ミコト?もうチケット買った?」

「…買ってないけど」

「良かった!悪いんだけど、別の日にしてくれないか?」


ドクン…

え…嘘でしょ?
まさか…


わたしの心臓が嫌な音を立てて鳴り出した。


「どう…して?」


震える声でそう言うと、お兄ちゃんは慌てた様子で返事をする。


「それが、今日出動予定の同僚が熱を出してさ、代わりに出動要請が来たんだ。
悪いな、今度必ず埋め合わせするから」


嘘だ…
だめ…行っちゃだめだよ…


カタカタと、携帯を持つ手が震えてくる。

息ができない。


「ダメ…行っちゃだめ!」

「ミコト…ワガママ言うなよ」


流石のお兄ちゃんも困ったように言った。

だけど、これだけは譲れない。

だって今日仕事に行ったら、お兄ちゃんは…
お兄ちゃんは死んじゃうんだよ?!


「やだ!イヤ!行かないで!
今すぐここに来て!!お願い!」


トロピカルランドの入り口前で、叫ぶように電話口に向かっているわたしを、周りの人たちは不思議そうな顔して見てる。

でも、そんなものはどうでも良かった。

お兄ちゃんを救うことに必死で、嫌だと何度も言った。


「だめ!お兄ちゃん!
お兄ちゃんが死んじゃうよ…」

「ミコト…出動前に縁起でもないこと言うなよ。
…あ、じゃあ行かないと。
今度必ず埋め合わせするから!
じゃあな!」

「お兄ちゃん?!おに…」


プツ…

ツー ツー ツー



埋め合わせ、できないんだよ…
できないのに…


わたしはその場で座り込んだ。

未来を変えたと思ったのに、結局お兄ちゃんは予定通り出動してしまった。


なぜ??
もしもお兄ちゃんが救えないとしたら、わたしは一体何のために過去に来たの?

絶望をもう一度味合わせるために、神様がご丁寧に連れてきたわけ?

もしそうなら、恨むよ神様…

地面にパタパタと涙が落ちた。

そして、立ち上がるとお兄ちゃんが出動するビルに一目散に走った。

間に合わないのは分かってた。

だけど、爆弾が爆発しないことを、お兄ちゃんじゃなくて別の誰かが担当することを、
奇跡が起きることを、祈った。

願ったのに。



お兄ちゃんは、11月7日
過去の通り、殉職した。





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