第8章 叶わぬ願いと叶った想い
終電がなくなる前に、俺たちは店から出た。
帰り道が同じ、降谷と諸伏と伊達班長、俺と萩の二つに分かれて帰路についた。
「あー。飲み過ぎた」
「陣平ちゃん」
「んー?」
萩もしこたま飲んでたはずなのに、シラフみたいな顔をして俺に真剣にさっきの話の続きをする。
「ミコトのこと、どう思ってる?」
「どうって」
「…ミコトは、陣平ちゃんを想ってるよ。」
「…俺なんかが、オメーの大事な妹を汚せるわけねぇって」
「他の男に汚されるより、陣平ちゃんに汚される方が100倍マシだ」
「…萩…」
「…ミコトのこと、頼むよ」
萩は、静かに笑った。
ミコトが俺のことをまだ想ってる?
そんなわけないだろ。
2年も放ったらかしにして、あいつは今、華の女子大生だ。
2年前よりさらに美人になったし、男が放っておくわけない。
きっと俺は、幼馴染の1人に格下げ。
もしくはただの兄貴の友人にさらに格下げだ。
この時は、ミコトと付き合うつもりなんて毛頭なかった。
ただ珍しいとは思ってたんだ。
萩原がいつになく真剣に、こんなことを言うから。