第8章 叶わぬ願いと叶った想い
彼は同じ学部の女子にモテモテだ。
新出くんに恋してる女の子はとても多い。
優しいからな…背も高くて顔も良し、おまけに将来有望な医者の卵。
頭がいいくせに偉ぶったりしないし、女子が惚れる要素全部持ってる。
そんな風に彼を見ながら、今日の授業の話をして正門へ歩いていくと、正門でよく知った顔を見つけた。
「え…じ、陣平くん??」
慌てて駆け寄ると、陣平くんは掛けていたサングラスを外しながらわたしを見た。
「おう。近くまで来たから、飯食いに行こうぜ」
陣平くんが、ご飯に誘ってくれるのは初めてだ。
過去、無かったよ??
これは、未来が変わり始めているってことかな?
6日後にお兄ちゃんは助かるし、これは神様がわたしにくれた大きな奇跡に違いない。
もしかして、陣平くんともこのまま恋仲になれる??
「行く!!
じゃあ、新出くん、また明日ね」
「あぁ。また明日」
隣にいた新出くんに手を振り、陣平くんの車の助手席に乗った。
陣平くんは、少しだけ不機嫌そうな顔をしてこっちを見てくる。
「さっきの男…前に言ってたやつ?」
「え?何の話?」
「…ゴム使ったことあるっつってたろ」
「あぁ……え!違う違う!新出くんじゃない!!!」
陣平くんだよ!
わたしが人生でたった一度、男の人に抱かれたのは陣平くん。
だけどそれは今から少し先の未来だし、誰と使った?と聞かれて「陣平くんと1年後にするんだよ」って言えるはずもなく。
と言うかその未来はもしかしたら無くなっているかもしれないし…