第7章 時を駆ける想い
さっきから、どうしたって言うんだよ…
「我慢できねぇほど、痛いか?」
「違うの…痛くて…嬉しいの」
「はぁ?!マゾか!!?」
そう言って笑うと、ミコトもまたふふっと涙に濡れた目で笑った。
その涙を無造作に自分の手で拭ったミコトは、鼻声で
「よし!じゃあお兄ちゃん帰ってくるまでに片付けよ!」
そう言いながら、段ボールを開けていった。
しばらくガサガサと、段ボールの中身を出して適切な場所に仕舞う。というのを繰り返していたが、突然ミコトが何かを見つけて手を止めた。
「ん?なんだ?萩のエロ本でも見つけたか?」
半ば冗談でそう言った俺だが、まあ半分当たりみたいなもんだった。
ミコトの手には開封済みのコンドームの箱が握られている。
兄の性事情をまざまざと見せつけられたミコトは、てっきりあわあわと取り乱すのかと思いきや、至って冷静にそれをベッドサイドのチェストに入れた。
「…驚かねぇの?」
「なにが?」
「何がって…」
俺は、ミコトはまだまだ子供だと思っていた。
けれど気付けばもうミコトは19歳の大人の女で、少しも聞きたくないことが俺の口から突いて出てきた。
「…使ったこと、あんのか?」
まさかな。
ミコトがそんな…
萩と俺がそばにいなかった間にそんなはず。
そう思っていると、ミコトはじっと俺の目を見て言った。
「あるよ。使ったこと」
…は?
あるって、それはつまりどっかの誰かとしたってことか?
どこの男かもわからねぇ奴が、汚い手でミコトに触ったってことか?
まるで、大切な宝物を傷つけられたような気分になり、俺の胸の奥がざわつく。
「お兄ちゃん、しょうがないよね。
せめて隠して持ってきてよ。
こんな堂々と段ボールに入れないでさ…」
そう言いながら笑うミコトの腕を、俺は思わず掴んでミコトを見た。