第6章 兎流慰め方( 錆兎 )
「 ばーか。だから、そんな顔すんじゃねぇ 」
「 んぅ、なっ… !」
落ち込んでいた俺の元に、右手を伸ばすなり獣の耳を含めて黒髪へとくしゃりと撫でた錆兎の行動に、少しばかり驚けば、こいつは何を思ったのか片手も増え
両手でワシャワシャと撫で回してくる。
「 ちょっ、な、なにして、やめっ、っ!かみ、髪がっ! 」
「 元々整えてねぇだろうが、男ならしゃきっとしろ! 」
「 ぐっしゃ、のまちがい、だろ…ンッ!ちょ、っ! 」
頭がぐあんぐあん揺らぎ、目の前を雛が走り回ってるぐらいにワシャワシャと撫で回す彼に、驚いていたのが次第に、悩んでるのが馬鹿らしくなり不器用に笑顔になる。
「 もうっ、ははっ、やめろって! 」
「 やめてくださいの間違いだろ?ほら、ほら。色男なんだろ?これでどうだ! 」
「 ちょ、ふはっ!色男もクソもあるかよ!本当、髪がっ、錆兎ッ… 」
もみくしゃになるほど撫でられて、やっと手を離した錆兎に、俺はボサボサになった髪を整える為に顔を振れば、彼は片手を自身の腰へと当てる。
「 やっと、笑ったな 」
「 あ…… 」
撫で回された事で笑ってしまった俺に、錆兎はふっと眉を下げて柔らかく微笑んだ。
「 男なら、弱いものを体を張って守るのは当たり前だろ?お前はよくやったんだから、誇らしげにすりゃいい。まぁ、油断して攻撃を受けたことは鍛え直す必要があるけどな 」
「 …どっちか、兄弟子か分からなくなるな 」
コイツは口は悪いが、優しいと思う。
俺が落ち込まないようにしてくれたんだろうって思うと、嬉しくて抱き着いていた。
「 錆兎!!ありがとうな! 」
「 ば、バカ!お、男が急に抱き着いてくるんじゃねぇ!! 」
今度は俺から、その髪へと頬を擦り寄せていれば
嫌そうに胸元を押し返して来るが、本気で引き離さないのは優しさだよな。
「 …………… 」
「 おや、冨岡さん。なにをそんなに見て…あぁ、羨ましいんですね? 」
「 俺は…羨ましくない 」
「 素直になったら宜しいのにー 」
冨岡が影で見ていた事は、騒ぎながら戯れていた俺達は知らなかった。
「 はっ! 」
けれど錆兎は直ぐに冨岡の視線に気付けば、俺の腹を蹴飛ばして立ち去った。
「 ごほっ…。錆兎…ツンデレってやつだろ… 」
「( 俺は羨ましくない… )」
