第4章 兄妹の絆( 冨岡 )
〜 多神 視点 〜
お館様に、鬼が出た噂だから義勇と一緒に見に行って欲しいって言われた為に、俺達は雪が積もる雲取山へと向かった。
「 イソゲ、イソゲ!オニが近い! 」
「 そんなの匂いで分かってるさ。義勇、急ぐぞ 」
「 嗚呼 」
俺の二代目である鎹鴉の春曙(はるあき)
一代目のやつは、寿命で一年前に亡くなった為に
去年からコイツが俺の新しい鎹鴉となった。
せっかちと言うか、若いから張り切ってるんだろうな。
パタパタと飛ぶ姿を見て木々を飛び、走る速度を上げていれば、義勇の連れている鎹鴉の寛三郎は遅れていた。
彼奴もそろそろ歳だから、大変なんだろうな。
そんな呑気に考えてる余裕がない程に、オニの匂いにハッとしては刀へと手を掛ける。
「 義勇、先に行け。俺は雑魚を始末していく 」
「 ……分かった 」
「 グァッ!! 」
まだ人を一人、二人程度しか食ってなく。
人間の要素が多く残った鬼が襲ってくれば、義勇を先に行かせ、雑魚を片付ける。
技を使う程でも無い鬼の為に、早々に斬ればこの鬼に残る血の匂いに顔を上げた。
「 春曙、鬼舞辻が近い。少し離れていろよ 」
「 ワカッテル!キヲツケロ! 」
相棒になったばかりの鎹鴉を失いたくは無い為に、上空に高く飛んでいくのを確認した後、義勇が向かった先とは違う方向へと走る。
雪道を進むのは面倒な為に、木へと飛び上がりそのまま枝をつたって進んでいく。
さっきの鬼が居たであろう民家が見え、確認すれば中へと入る。
「 …ったく…酷い事をする 」
妻は斬殺され、幼い子供も死んでいた。
それを見て、民家から出れば春曙へと声を掛ける。
「 春曙、隠を呼んできてくれ 」
「 ゴトウダナ!ショウチ! 」
別に後藤じゃなくても良いが、俺の隠でもあるから彼奴を呼ぶのは無理ないか。
後藤が来てくれるならここはそのままでいいな、と思い鼻先を鳴らして匂いを嗅ぎ、次の場所へと行く。
「 ……母親と、子供 」
その民家の中には、母親と男の子が二人。女の子が一人いた。
そして色濃く残る強い鬼舞辻の匂いに、ハッとする。
「 鬼にされた奴がいる! 」
幼い子供が寝かせられてるのを見て、殺された以外の傷は無いが、足跡にそう思う。
だが、一人は人間として生きてるな…何故だ?