第4章 告白現場と口止め料
翌朝の王立学園。
一人で教室に入り、座席に座る。シェラザード様の姿は見ていない。その内何処かで見かけたらいいな・・・と、午前中そう思っていた。
今は昼休み。
いつもの場所ではなく、何処か他の場所をと裏庭を歩いていた。裏庭と言っても王立学園。綺麗に手入れされて、綺麗な花々も愛でられる。
「あ、あそこにベンチがある。あそこでいいかな。」
ん?人の声?ベンチに近付く度に、その声の音量が大きくなっていく。そして、ある一定の場所まで近づいて立ち止まった私。
こ、告白されてる?だって、お慕いしてるって言ってる。舌っ足らずな女性の声が、好きだ好きだと言っているのだから。
不味い。もし、見つかったら面倒な事になりそうだ。そう思ったのも束の間、聞き覚えのある声が容赦なく言葉を吐いた。
「先日の伯爵家令息のことは、もう終わった事なのか?」
女性の熱が籠ったアプローチが止まった。
「第一、言葉の使い方を間違っている。ずっと好きだったと言うのは、今回使う意味を為さないように思うのだが。」
ごもっともです。
「それから、私は頭の弱い者が嫌いだ。そして二度と、私にそんな戯言を言う為に声を掛けたりしないで貰おう。」
あ、走り去る足音。あんな完膚なきまでの拒絶。らしいと言えば、らしいのかもしれないけれど。と、そんなことより私も去るタイミングを逃してしまった。
身を翻し踏み出そうとした時、普通の声色で私の名を呼ばれた。思わず、体が跳ねる。どうやら、気付かれていたらしい。それも、らしいと言えばらしいのかもしれないのだけど。
「す、すみません。シェラザード様。立ち聞きする様な真似をしてしまい。」
「偶然だったのだろう?この場にいると言うことは・・・私を避けようとしている行動だと思っていいのだろうか。」
心の中で、悲鳴を上げる。何か、全てバレバレな気がする。確かに、あのことを話そうとは思っていた。
でも・・・もし、誰かに二人だけでお昼を食べているのを見られたら、これも良くない気がする。私の為ではなく、シェラザード様の為に。
俯く私の視界に、シェラザード様の足が入って来た。
その瞬間、私は早口で謝罪とお見舞いのお礼を告げ、頭に描いた言葉を口にした。勢いに任せて言わなければ、時間が過ぎる程に言いにくくなるだろうから。捨て身の戦法だ。