第16章 ベゴニア

｢おい、竜胆？
髪なんてセットしてどこいくんだよ｣

｢べ…つに兄貴に関係ねえだろっ｣

｢ふーん、東堂ちゃんのとこか｣

｢なんで分かるんだよ気持ちわりいな｣

｢おいおい兄ちゃん泣くぞ｣

いつもより時間をかけて髪の毛をセットしている俺にうしろから兄貴が話しかけてきた。隠したって無駄なことくらい分かってるけどなんとなく恥ずかしくて行先を言わなかった。なのになんで分かるんだよ。

｢うっせえ、急いんでんの俺は！！｣

｢なになに、デート？♡｣

｢そんなんじゃねえよ…！｣

｢だーってこないだ竜胆さあ〜
《俺の女になんの用？》とか言ってっからさあ〜｣

｢…っ！あ、あれは！
あの男が東堂の腕掴んでたから…！｣

｢んはー、かっこよかったぜ竜胆〜♡｣

｢ああもう、行ってきます！！！｣

｢はあ〜い、いってら竜胆〜｣

あーもうなんなんだよ…くっそ恥ずい。
俺の話なんて全然聞いてねえくせに、忘れて欲しいことばっかり覚えてやがるバカ兄貴。

前に会いに行った時と同じように学校終わりの東堂を校門の前で待ち伏せする。チャイムが鳴って生徒が校舎から出てくる。デジャブかと思うくらい同じ流れ。でてきた女子生徒に囲まれた。まただ。あーだりい。

｢お兄さん前もウチの学校来てましたよねぇ！
何処の学校ですかあ？｣

｢誰か待ってるんですかあ？
彼女とかですかあ…？？｣

｢お兄さん連絡先教えて下さあい！｣

はーだる。

話しかけてくる女全員にシカトこいて校舎から出てくる中に東堂がいないか探す。約束してた訳じゃないし…会えなくても仕方ないよなあ。

しばらくすると校舎からでてきた一際美しい彼女。
1人…？てっきり今日もSPみたいに張り付いてる東卍の奴らと一緒かと思ったのに。まあその方が都合いいか。

｢あ、東堂…っ！』

話しかけてくる女を振り切って
東堂の名前を呼んだ。

『竜…ちゃん？』

｢ごめん急に来たりして…今日は1人なのか？
場地とか三ツ谷とか…マイキーたちは？｣

『今日はみんな忙しいらしくて1人なの
竜ちゃんはどうしたの？』

｢あ…いや、その…えっと…っ｣

人が多くて話しずれえな…

『あ、前に圭介くんと行ったカフェでもいく？』