第1章 夢の中
side 夢主
『なん…でっ なんで私を置いていくの…っ
お母さん…!お父さん…!』
ああ、またあの夢だ。
母と父が私と兄を残して死んでしまってから1ヶ月が経った。もう居ないと頭では分かっていても心が追いつかない。久しぶりに休みが取れたと2人で旅行に行ったきり帰らぬ人となった。原因は飛行機の墜落。大好きな両親だった。それから私は連日ニュースで流れる墜落する飛行機の映像が頭から離れず夢にまで出てくるようになった。
「コンコン 」
『はいって』
「おはようございます 東堂お嬢様 」
『おはよう 朝ごはんならいらないわ。
それより ねえ、瀬川。わたし笑えてるかな』
「…そうですね。最近はあまりお嬢様の笑顔を見ていない気がします。…すぐに癒える傷ではありません。無理をして笑わずともいいんですよ。」
『ありがとう。あなたがいてくれるだけで少しは気が紛れる。本当よ。』
大好きな両親がいなくなってわたしは笑い方を忘れた。毎日わたしが寝付くまで 使用人の瀬川が付きっきりでそばに居てくれるおかげでなんとか寝られている。
わたしの父は俗に言うハイブランドの社長だった。
人周り年の離れた兄は両親がなくなってすぐに跡継ぎとやらで忙しくしていてまともに会えていない。急に一人ぼっちになった気分だ。