第2章 日記
.
激しさを増した雨が、窓ガラスを叩きつける
僕はお絞りで涙を拭うと
そのボツボツと言う陰気な音を聞きながら、日記のページを捲った
──4月1日──
今日から日記をつける事にした
何故かと言うと、この頃自分の身体に限界を感じ始めていたからだ
伊達に長い間病気してないから、私は自分の具合の悪さなんか、すぐに解る
コレはもう、いつ逝っちゃっても可笑しくないレベルに陥るのは、間近だと言っていいだろう
こんなコト、何で冷静に書けるんだろうって自分でも不思議に思うけど
きっと、小さい頃から、自分の病気と向き合って生きてきたせいなんだろう
私は、物心ついた頃に
自分がいつ死んでも可笑しくない難しい病気だと言うことを知った
それから私は、ずっと自分の死と向き合って生きてきた
だから、私には、とっくの昔に死ぬ覚悟は出来ていたのだ
ただ
私には、心残りがある
それは、私の大好きな彼のことだ
私が、何時死ぬか解らない難病だと知った上で
私のこと好きだって
…愛してるって言ってくれた彼を
私は、遺して逝かなくてはならない
それが
心残りだ
…今日は、エイプリールフール
彼に「私が死んだら、きれいさっぱり私を忘れて」って
言ってみた
「バカを言うなよ」って、泣きそうな顔した彼を見て
改めて、好きだなぁって、思った
「……言ったな、確かに(苦笑)」
僕は頬杖を付いて、その日のことを思い出した
.