第2章 日記
.
席に座った僕は、紙袋から中身を取り出した
中から出て来たのは、分厚い皮で覆われた、本のようだった
何の本だろうかと表紙を見ると、金色の文字で「Diary」と書かれていた
「……日記?」
僕は、恐る恐る皮の表紙を捲った
「あっ…」
表紙の裏の白いデコボコした部分に、何かメモ書きの様なものが記されていた
僕は表紙を押し広げて、彼女が書いたその文字を読んだ
──親愛なる、章くんへ──
コレは、貴方に贈る、ラヴレターです
私が死んで、悲しみに暮れる貴方に、私が唯一出来る贈り物です
私がどんなに貴方を愛していたのか
私がどんなに幸せだったのかを
貴方に知って貰いたくて
私は毎日貴方への想いを書き綴る事にしました
だから、コレは
日記と言う名の、ラヴレターなんです
「………ラヴレター………」
僕は表紙の裏に書かれた君の記した文字を、指で辿った
デコボコなその場所に書かれて、所々霞んだ文字が、俄かに滲んで全部が霞んで行く
「お待ちどうさん」
マスターは、ポロポロ涙を零す僕を気にする素振りを見せずに
芳ばしい香りを漂わせるコーヒーのカップを、テーブルの隅に置いた
.