第2章 日記
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「私が死んだら、きれいさっぱり私を忘れて」
「………は?」
両想いになって、晴れて君と付き合う事になった僕は
毎日の様に彼女の病室を訪れていた
その日も何時も通り彼女の病室に行って、今日あった出来事やら何やらを話していたら
彼女が急にそんな事を言い出した
「あたしもう直ぐ死んじゃうじゃん?
だからさ、章くんだってまだ若いんだし
新しい恋をするためにはあたしのコト忘れなきゃでしょ?」
「ば、バカなコト言うなよ!」
僕は前のめりになって彼女の手を握った
「忘れる訳ないだろ!忘れられる訳ないだろ!」
「…んなに、ムキになんなくても良いじゃん(笑)」
「なるよ!当然だろ!」
益々ムキになる僕を見て、智子は嬉しそうに、うふふと笑った
「じゃあ、仕方ないから忘れられないで居てやろう」
「んだよ、ソレ(苦笑)」
「ふふっ…いい感じで上からでしょ?」
「うん。かなりいい感じで上からだな」
二人で顔を見合わせて、笑い合う
それは、一見ごく普通の恋人同士の戯れに見えた
だけど僕らには、常に“病気”と“死”言う、暗い影が付きまとっていた
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