第2章 日記
.
ぼんやりと君とのコトに思いを馳せてバスを待っていた僕は、ふとお兄さんに手渡された紙袋の事を思い出した
「…何かな、これ」
僕は、お兄さんから渡された紙袋の中を覗いた
何やら本のようなものが入っている
ソレを取り出そうと袋に手を突っ込んだら、その手の甲にポツリと水滴が落ちた
(やばい、降り出した!)
顔を上げて道路を見ると
その上に、濃い灰色のでたらめな水玉模様が出来上がっていた
(確か来る途中に喫茶店があったな)
僕は紙袋が濡れないようにジャケットの中に抱えて、来た道を戻った
ちょっと走って行くと、通り沿いに寂れた喫茶店の看板が見えて来た
僕は勢いを増し始めた雨に追い立てられるように、その喫茶店に駆け込んだ
───カランカラン
ドアを開けると、其処に取り付けてあるカウベルが、何だか懐かしい音を立てた
「いらっしゃい」
ドアを閉めると、カウンターの奥から如何にもって感じの髭を蓄えたマスターが出てきた
「好きなとこに座んな」
マスターはお絞りを僕に手渡すと、店内を指し示した
僕はそれを受け取ると、窓際の一番端の席に座った
「エスプレッソ、下さい」
「はいよ」
メニューを見ずに注文する僕に、マスターは軽くウインクして、エスプレッソマシンをポンと叩いた
.