第1章 涙雲
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「……笑顔をね、覚えてて欲しいんだ」
「…え?」
重苦しい沈黙を破って、彼女が言った
「…痛いとか、辛いとか……悲しいとか…
そんな事言っても病気は治らないでしょ?
……だからせめて……あたしのコト覚えて居てくれる人たちに
あの子、何時も笑ってたな、って
あの子はあの子なりに幸せだったんだな、って
……そう、思ってもらいたいの」
そう言って僕を見詰める彼女の瞳を
涙がキラキラと輝かせて居た
「だから笑うんだ、何時も…笑って居たいんだ…
それにね、笑うと免疫力が高くなるんだって!コレ本当!」
涙を湛えたまま笑う彼女
僕はその、白くて、頼り無い程細い手を握った
「…俺は…俺には…本当の顔を見せてよ…」
「……章くん……」
「俺、智子が好きだ……大好きだ……だから…」
「………何だよ」
智子は、可愛らしくふにゃりと笑うと、恥ずかしそうに僕の手を握り直した
「あたしたち、両想いじゃん」
キラキラと潤んだ瞳を輝かせて笑う彼女は
とても
とても綺麗だった
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