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ラヴレター─君が遺した日記─

第1章 涙雲


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「誰か来るんですか?」



病院のロビーの長椅子に座って、怪我をした脚のレントゲン写真が出来上がるのを待ちながらぼんやりしていた僕は

知らない誰かにそう声を掛けられた


ちょっと鼻にかかったような可愛らしい声に釣られて振り向くと

その声に違わない可愛らしい女の子が白い寝間着姿で立っていた



「え?…別に…写真が出来るのを、待ってるだけです」

「そうなんだ。あんまり端っこに座ってるから、誰かが其処に座ってたのかと思った」



女の子はそう言うと、がらんと空いた僕の隣に少し間を空けて座った



「私もレントゲン写真取りに来たの」



ニッコリ笑う女の子

年は僕より少し下だろうか

多分、17・8才と言った所だろうか



「君、入院してるの?」



寝間着姿を見てそう言うと、彼女はそれには答えずに、ふふっと笑った



「お兄さんは、怪我?脚、骨折したの?」



彼女はギブスで固められた僕の脚を指差した



「うん。大学のサッカーの試合でさ…情け無いけど、ゴールポストを思い切り蹴飛ばして、ぽき、さ」

「えぇ?何でポストなんか蹴ったのぉ?(笑)」



ケタケタと可笑しそうに笑う彼女

僕は釣られて笑いながら言った



「わざと蹴った訳じゃないよ(笑)シュートのこぼれ球を蹴ろうとしたら、相手の選手とぶつかってポストを蹴っちゃったんだ」

「ふぅ〜ん……お兄さん、下手くそなんだ(笑)」

「……(苦笑)」





僕は、そんなに寛大な性格をしている訳では無かった

でも

その時僕は、自分の事を「下手くそ」だと言って笑う見知らぬ少女に、少しの苛立ちも不快感も覚えなかった


寧ろ、屈託なく笑うその笑顔に

僕は、甘い胸の疼きすら感じていた



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