• テキストサイズ

ラヴレター─君が遺した日記─

第4章 終焉の時


.



5月の後半に差し掛かってから

君の容体は目に見えて悪化していた


元々華奢だった体はさらに痩せて、息をするのも苦しそうだった





それなのに君は、相変わらず冗談ばかりを言って、明るく振る舞っていた

僕はそんな君の様子にすっかり油断して

君の体を蝕んでいる病魔が、君を確実に死へと追いやって居ることなど

考えも及ばなかった





いや、違う





……考えようと、しなかったんだ……











「智子、調子はどう?」

「良いわけないじゃない、病人なんだから」



病室にやって来た僕に

青い顔をして、強気な笑顔を作る君





……胸が、痛い





「そりゃそうだな」

「でしょ?見てよこの腕!犬が見たら間違いなく歯磨き用の骨だと思って噛み付くわよ!」

「 あははは、それは言いすぎだろ(笑)」





……解ってる





「そっかなぁ?骨皮筋子って感じじゃない?」

「なんだ、それ?」

「あたしの昔のあだ名!」

「マジっすか(笑)」

「マジっすよ(笑)」





……君は、無理をしている





「はぁ……あ〜……病人は、笑うと……体力を、消耗するわ」

「大丈夫?」

「だから、大丈夫じゃないって、ば(笑)」





……無理に、笑ってる








“大丈夫じゃない”



それは、冗談のようでそれはきっと

君の、本音


言葉の合間に漏れる吐息が


「もう、限界だ」


って、言っているようだった





だけど、僕はそれを





冗談だと、思っていた





…冗談だと、思いたかった



.
/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp