第3章 彼女の真実
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長年病気を患って
何時果てるか知れない命の恐怖をかみ殺して…
そんな
辛く苦しい日々を過ごして来たにも関わらず
君は、何時も明るく素直だった
明るくて、ユーモアに溢れていて
可愛らしくて、ちょっと男前で
僕はそんな君が大好きだった
だけどね、智子
僕が一番心惹かれ、胸を焦がすほど愛おしいと思ったのは
君の、たまに見せる健気な姿だった
体が怠くて辛い時も
面会時間が短くて余り話が出来なかった時も
君は泣きそうになりながらも、懸命に笑顔を作る
決して人前では泣くまいと
家族や友人や
僕にさえも
心配をかけまいと、健気に明るく振る舞う
そんな君を
僕は、心から愛していた
何度
「俺の前では、我慢しないで泣いても良いんだよ?」
って言っても
「バカ言うんじゃないよ、泣きたくないのに泣けないわよ!
そんな言うなら、マタネギでも持って来なさいよ!」
なんて、おどけてはぐらかす君
僕が帰るときに手を振りながら、泣きそうな顔して笑うくせに
絶対に、涙を見せようとはしなかった
だから、僕は知らなかったんだ
君が、本当は
泣き虫だったってコトを
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