第6章 宇宙に帰る
面倒臭そうにため息をつく。
「だから何?私が愛したのはラウだけ。ラウがいない世界なんてどうでもいいのよ。早く殺しなさい。」
「ならどうしてすぐ死ななかった?」
ヒルデの瞳が揺れる。
「本当は幸せになりたかったんだろ・・・。」
ヒルデがくすくすと笑いだす。
「何をいうかと思ったら・・・。ふふっ。私は私を、ラウを苦しめたあいつに復讐したかっただけ。あわよくば、キラ・ヤマト、あなたも殺したかったけどね。もしかして、私の演技に騙されてしまったの?」
バカにしたように再びヒルデが笑う。
「イザーク、救いようがないよ。」
「・・・刑の執行は。」
「まだ決まってないんだ・・・。」
銃をもっているが勝手に殺してしまうことは流石にできない。
「あら、残念ね。ねぇ愛しいイザーク様?それまで毎日会いにきてくださる?」
からかうように下から覗き込む。
「もちろんだ。」
「イザーク!!」
驚きを見せるキラを背にしてイザークが部屋を後にする。
「待って、イザーク!」
キラが追いかけてくる。
「彼女の生い立ちに同情するところはたくさんあるかもしれない。でも、だからと言って僕は許す事ができないよ。彼女・・・」
「わかっている!」
でもっ、と声が出そうになるが血が滲むほど拳を握りしめているイザークを見てキラが口をつぐむ。
ヒルデはイザークが出ていった扉をぼうっと見つめる。
あぁ、気付かれていたのだ。
わざと嫌われようとしていた事を。
あなたを好きになるための演技だと言いながら本当に好きだった事。
「惨めね・・・・。でも仕方ないわよね。」
これまで任務で失敗した事はない。
ラウ以外本音を見せた事もなかった。
それなのに。
私も幸せになれるかもしれない。
そんな気持ちがどこかにあって。
だから隙を見せて。
いけないところも愛して欲しくて。
甘えたくて。
助けて欲しくて。
でもやっぱり一緒には生きていけなくて。