聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第1章 PASSION
美咲の計算通りに、童磨の客、黒死牟の客を中心に一斉に高額の酒の注文が相次いで、店の雰囲気がもっと賑わいだした。
「今日もすごいですね。美咲さん。僕の手品もみてよ。」
スタッフである男の子もホスト並みに整った顔。常連の美咲はもちろん知らぬわけがない。
「累君、手品上手だもんね。さっきもステージ楽しかったよ。」
「累。特別にヘルプ入るの許す。」
「ありがとう。」
塁は会長である鬼舞辻を中心に、この店で可愛がられているスタッフ兼ホストだ。
勿論、客からも人気であるが、まだ高校生。客を取るに早い年頃。なので、競争心も彼に対してはなく余興の才能をもつからこそどのテーブルでも重宝されるのだ。
トランプを使ったもの、ハットとクロスを使ったものと少し大掛かりな手品を見せては、そこのテーブルに居合わせた者たちの大きな歓声が上がる。
VIPルームがどの部屋でも賑わいを見せる。
それはNo2の席ほどに活気にあふれる席はないだろう。
TOP3の中でも、一際余興が好きで、女の扱いは天性というべきか。
それ故、女は誰しも”自分が本命”だと思ってしまうのだ。
童磨を指名する客でこの女は外せないだろう。
名は、門倉マキ。
童磨の実家で運営していた施設で育ったという妓夫太郎の妹が働く、the first quarterで一昨年まで嬢王だった女だ。今はアパレルの会社を立ち上げて大成功している身。
こちらも先ほどの小暮美咲と並ぶ常連である。
童磨の客となった所以は、やはり妓夫太郎の妹との来店がキッカケだ。
「梅ちゃん、そろそろ妓夫太郎のところ行きなよ?寂しがってるぜ?」
「え~ここにきて厄介払い?」
「厄介払いじゃないぜ?さっきから俺への目線がきついのだよ~。」
「んもぉ~お兄ちゃんったら!せっかくマキさんとおしゃべり楽しんでるのに~!!」
「行っておいでよ。後で4人で写真撮ろ♪」
駄々をこねる梅を宥めると、「じゃぁ、待っててくれるのね?」と笑顔になり、大きな声でおにいちゃ~んと呼びながら、店ではそれやめろという兄妹仲睦まじい様子がうかがえて二人見合って笑い合った。
「なんだかんだ言いながら結局仲がいいよね。」
「そうだろ?俺にとって昔から癒しでしかないからね。」
そう話しながら、先ほどの注文した酒を二人で飲んだ。