聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第1章 PASSION
観衆のホストとスタッフが沸きあがる部屋の隣。
こちらはまだ、シャンパンのお呼び出しはないようで、20未満ホストが女に酒を作る。
TOP3の猗窩座がいるVIPルームは、これはまた上客で常連の女、ホストゲームを健全に楽しむ女としてクラブで客にも存在が知られている。
名前を小暮美咲という。
もともと黒死牟の客だが、猗窩座が見込みのあるやつだと評価し、彼女のホスト遊びの流儀を知るからこそ上手く流してやったのだが、それが功を奏して今の地位があるといっても過言ではないだろう。
そういうこともあってか、猗窩座はその女に入れ込んでいる。だが、場をわきまえて彼女から鍛えてもらった分、他の女性客にもあざとさと弟キャラ、顔面の良さと、さりげない気配りが大人の女の心をくすぐるのだ。
営業に支障がないからこそ許されてはいる。他の女性客の嫉妬で美咲を傷つけることにならないよう配慮も出来るのだ。
「美咲さん、今日はほんとに嬉しいです。俺、いっぱい美咲さん笑顔にしますよ?」
「座ちゃん、その顔面でそんな表情できるんだもん、ホントいくつよ。」
「18ですよ。美咲さんだけですよ?俺がこんなになるの。」
ホスト遊びに慣れて楽しんでる女には常用句に聞こえても、”ゲーム”と称している美咲はありがとうと笑顔で返すのだ。
「よし、そろそろシャンパンいっちゃう?今日は勝てるようにロマネコンティでやっちゃうからね!勿論今日もツケなしよ~!!」
女は、まだ若い男の事情をよく知るからこそ、大金を下ろしていく。勿論人気もすこぶる高い方だが、店の客で一番の金払いが多く来店率が高いこの女こそが猗窩座を強く支えていることは言うまでもない。
スタッフよりシャンパンコール隊の呼び出しがあると、わらわらと賑やかなホスト達が集結する。
「姫さんと~猗窩座殿の~コール入ります!!」
コール隊の掛け声に合わせて、そこに集まる者が手拍子をする。スタッフ最年少の癖毛の男がドボドボと最高級の酒をグラスタワーの頂上から流していく。
「座ちゃんを勝たせちゃうぞ~!!しぼ君、童磨君、打ち負かせ~!!」
美咲の煽る声はマイクで拡張されて、それぞれの客の競争心を煽っていく。
常連で大口客である美咲ならではの楽しみ方だ。