聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第1章 PASSION
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[pm9:30]
VIPルームは6席。
そして、そこに集まるのはこの店のTOP3の客が殆どだ。
ある程度仕切りはあったとしても、シャンパンコールの時は他の客を煽ることができるように目立つ仕組みになっており、10人ほどのホストとスタッフが集結して、高く積まれたシャンパンタワー、客と指名ホストを前に囲むように並んではマイクを使い掛け声を掛け合う。
「No.1No.1!」「No.1No.1!」
「黒死牟殿と姫さんのぉー!」「ソレ!」
「愛のゲームのドンペリペリペリ!」「ソレソレ!」
「タワーに全部注いじゃってー!」「ヨイショ!」
「姫さん、一言」
「シボさん、永久推し!勝たせるぞー!」
「殿方、一言」
「姫に感謝。」
「はいー!いただきましたぁー!」「ワァー!!」
スタッフに注がれる炭酸の酒がグラスからグラスと流れ8段のタワー全てに注がれた。
黒死牟が今いる席。
このVIPルームにいる女は黒死牟がプライベートで交際している女だ。
店のスタッフも、客からも公認で故あって黒死牟のファンクラブ(店非公認だが指名客の集まりではある。)から神と呼ばれる女。
名を藤川 綾乃という。
モデルでインスタグラマー。実業家としても顔が広い。
そういう事情もあってか、あろうことかシャンパンコールで駆けつけたホスト、スタッフの目の前で、黒死牟は女を後頭部から引き寄せて熱烈に唇を重ねる。
女は抗うことなく受け入れた。
「フゥ〜!!」「ヒュ〜!!」
「よっ!!No.1!!」
綾乃は唇を離されると、シャンパンコール隊と共に盛り上がってその場にいた妓夫太郎に写真を撮るようねだる。
「姫さん、もうちょっとくっつきなぁ~」
「こう?」
「そうそう。あぁ、つくづくいい女っすね。(俺の妹の方が美人だけど)羨ましいっすねぇ~。黒死牟さん。」
「妓夫太郎...。早く撮れ...。」
客には感じ取られないように圧をかけられた妓夫太郎は、「へい。じゃぁ、いきますよ~」とシャッターをきる。
他のコール隊が二人を囲むように取られた写真を見ては、客とホストをほめちぎって次に行くのが常。
嵐が過ぎ去るように個々の席にヘルプに入っていった。