聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
俺は、今美咲さんの暮らす部屋にいる。
震えが止まらない彼女を俺が送り届けてからここにいる。
天元に言えば、「おまえがアイツと重なって見えるんだろうよ。だから傍にいてやってくれ。泣かせるなよ。」だ。
そう言われてやむなくいるが、正直いろんな意味で無理だ。
いろんな感情と想い、美咲さんの心の中を思うと、いろんな複雑な心境が湧いてくる。
3日後は正月だ。結局あれから店も休んでしまった。
でも、天元と警官が店側に事情を話してくれたことで一応、解雇という事態は免れた。
美咲さんは事件後、茫然と窓を見やるだけで涙も流さず言葉も発しない。多分いろんな感情と起きた出来事を整理しているんだと思う。
そんな姿でいる彼女を置いてはいけなかった。
「美咲さん?大丈夫ですか?」
暖かい紅茶を入れて、彼女の寝室に来る。
サイドテーブルにそれを置いて、ベッドわきに座る彼女の隣に腰かけた。
布団にくるまってぼんやりと朝日を見上げて、その表情は昨日よりも明るくなったように思う。
「俺を...美咲さんのところに連れて行ってくれたのは、おそらく、杏寿郎という美咲さんの幼馴染だと思う。」
そう告白すると、ゆっくりこちらを見た。
「俺が助けたわけじゃない。俺も、彼に助けられた。おそらくだけど、美咲さんのトラウマを取り除きたかったんじゃないかなって思います。
だから、俺が助けたんじゃない。」
苦しいけどそれが真実だと思ってる。天元と二人であってるとき、杏寿郎という男は美咲の事が好きだったらしいが、美咲に負担をかけまいと黙っていたという。
彼の想いには敵いそうにないと思うと手元に力が入った。
「ねぇ......。」
か細い声だった。事件後、美咲さんが初めて話した声に驚いて彼女を見た。
「どちらにしても、君が助けようと思ってくれなかったら、わたしはここにいないんだよ。」
「でも、俺は.....「なんていうの?」え?」
「名前。本当の...。」
「狛治...。」
「狛治くんは狛治くんでしょ?わたしを助けてくれた。」
透き通るくらい優しい声で、思わず身震いがした。