聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
店につくと、どうしてだか居心地が悪い。
そして、1時間、どこかそわそわとして落ち着かない心に、一度店の外に出て気持ちを仕切り直そうとした。
『___!』
何かが俺に訴えてくるようなこの感覚はなんだろうか。急に血の気がゾっと引いて、いても立ってもいられなくなる。
その瞬間、ガツッと燃えるような熱い手に捕まれた感覚が過った。
だが、誰もいない。うっすらと消えそうな手。男の手だ。
平常心なら、この手をバケモノだと思って叫んだだろう。死を覚悟しただろう。
だけど、その手から感じるものから、不思議と怖いものは感じず、何かを俺に訴えているように思った。
その時脳裏に美咲さんの姿が映る。
もしかして......
この手が何を言いたいか、何故俺の手を引こうとしているのか分かった気がした。
でもなんでアイツじゃない??
しかし、事の重大さが何となくわかってロッカーに駆け込みタクシーを拾ってあの場所へ向かった。
「駅の路地裏、大至急向かってください!!」
話しの解る運転手で助かった。運転手は一番最短のルートを選んでできるだけ早く進んでくれた。
思い返せば何でその場所を言ったかはわからない。
俺の手にはまだ、熱い手の感触と薄っすらした手の輪郭があった。
美咲さんを助けた男か?
俺を美咲さんのところに連れて行ってどうする?
美咲さんが危ないのか?
疑問が多すぎて頭が回らない。
運転手は目的地について俺を降ろし、会計するのが面倒で釣りはいらんと1万を押し付けた。
燃える手に引かれながら懸命に走ってついていく。
走った先の十字路の左を曲がり人気のない路地に差し掛かると言い争う声。
街灯でギラリと何かが反射して光るのを感じた。
「美咲!!」
黒い帽子と服の男に押さえつけられている美咲さんを見つけて、男の気を引くために美咲さんの名を叫んだ。
全速力で走って、構えをとり、男の顔めがけてケリを入れる。
男はすっ飛んで地面に体を打ち付けた。