聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
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美咲さんとアフターした次の営業日は俺が休みだったので、今度は話を聞く目的で行ってた。
青い照明に照らされる暗めの店の奥で語られたのは、店主のこの人と美咲さんと、亡くなったもう一人の幼馴染との過去。
「美咲には俺と、もう一人幼なじみがいたが、8年前のクリスマスの夜、通り魔に襲われた美咲を庇って殺された。犯人は捕まっちゃいない。」
「.......。」
店主から聞かされたはなしはそうだった。
その事件以降、美咲さんさんは、目の前のこの人以外深い関係になるのを恐れるようになり、影で人を支えられる、表面だけで済む人付き合いがある世界に身を置くようになったらしい。
「俺が何かしてやれることってありますか?」
「あるぜ?」
そこで連れていかれたのはビラ配りをやってるところ。少しでも彼女に力になりたかった。
「美咲さん。こんにちは。」
「俺のダチとして連れてきたんだ。コイツ派手だし良いやつだろ?」
驚いた表情から、一瞬店主をジト目で見たけどすぐに笑顔になり、彼女は
「わたしの推しのホスト君だもん。いい男に決まってるじゃん!」
と言った。美咲さんは軽い気持ちで言ったのかもしれないけど、俺をちゃんと一人前の男だと言ってくれたような気持ちで嬉しくなった。
冷たい風とどこか冷たい街並み。こんな状況の中、8年もの戦いをしてきたと思うと、自分はなんて平凡な人生を歩んできたものだとおもう。
そんな気持ちで、真剣な表情でビラ配りする横顔を見た。
店では絶対知らなかった本当の彼女は素朴で強くて、でも、過去の鳥籠に巣篭っているようなところもある。
日も落ちかけて店に向かうと告げると、あの店から帰るときのを思わせるような物悲しさを滲ませた笑顔で見送られ、後ろ髪をひかれる思いがした。
だけど、今日は黒死牟は休みで、さっき累から連絡があって童磨も休むらしい。俺が出勤しなければあの会長は青筋を立てて手が付けられなくなる。
そうなっては彼女に会うことどころか家も父親も救えない。
もう一度ちらりと振り返ると、美咲さんは手を振って笑っていた。