聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
息をするのも忘れるほど必死で走る。
誰か助けて
まだ死にたくない。
コイツが捕まって刑を受けるまでは!!
そう思うもあっという間に距離を詰められて、わたしは何かに足を取られて転倒した。
「残念でしたねぇ。本当に残念。あなたのお父さんを恨みなさい?あの少年が死んだのも、あなたがこうやって私に殺されるのも全ては鑑定士である御父様が悪いのですよ?」
わたしの上に馬乗りになったそいつはやっぱり人間と思えない程気味が悪い男で身の毛がよだつ。
男はわたしを狙った動機を話し始めた。
「お父さん?」
確かにお父さんはそういう仕事をしてたけど、お父さんは病気で....
「散々コケにされましたね。忘れもしません。わたしはあれから職人ではいられなくなり全てが壊された。私の芸術を理解できないのなら、あの世でも苦しめばいいのです。あなたが私に殺されることで...!」
頭沸いてる人。逆恨みだ。
でもどうしようもできない。
わたしは何も変わらない。
あの日みたいに全身が震え上がって動けない。
鋭利なナイフがギラりと振り上げられるのがスローモーションで流れていく。
あぁ、もう死ぬのか。
ごめんね、杏兄。せっかくあの日命を張って生かしてくれたのに。
天兄、ごめんね。わたしももう.....
座ちゃん.....
『諦めるな!』「美咲!!」
わたしの内側からも外側からも声がした瞬間、反射的に突き刺さる刃を避けて左の頬が切れた。
その瞬間黒い靴に押し蹴られる男が視界から消えて、暖かい背中が目の前にあった。
綺麗にセットされた紅梅色の艶やかな髪、見慣れたスーツ姿。
「猗窩座くん.....ダメ....」
その後ろ姿が杏兄に見えた。
死ぬんじゃないかって思った。
「美咲さん。俺は死にませんから。」