聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
家に帰って、倒れるようにベッドに横になり
うつらうつらとしてきたとき
夢を見た気がした。
家じゃない真っ白な部屋に椅子が二つとテーブルが一つ。
開け放たれた格子窓でカーテンが静かにたなびく。
淡い光が一瞬きらりと光ったと思った瞬間、
目の前には亡くなった杏兄が後ろ姿で立っていた。
「杏兄...?」
わたしの声が聞こえたみたいで、後ろ姿が僅かに動き、漂う雰囲気が暖かくなった気がした。
今まで一度も夢にすら出てきてない。謝りたかった。わたしに力がなかったこと、腰が立たず助けを呼びに行くことが遅れたこと......
ゆっくりとこちらを振り向いた姿は、あの事件を思い出すようなズタズタに引き裂かれたコートを着て、顔は片目が血に染まっていた。
天兄と一緒にいる時じゃなく、わたしと二人でいる時ふと見せたことがあった暖かく微笑んだ顔。
ハツラツとしていたあの時を思い出して胸が締め付けられるような気がした。
「ごめんね...助けたかった。もっと3人で一緒にいたかった...。」
気にしなくていいよとでも言いそうに静かに首を振る。
もう一度微笑みかけて、突如真剣なまなざしが向けられた。
何かを訴えかけるように。
「____。_______。」
聞こえない。
口元は最初わたしの名前を呼んでくれた気がしたけど.....
なんて言ったの.......?
触れようと手を伸ばした瞬間、杏兄はまたどこかへ消えた.....。
暫く周りを見渡して、立ち上がると外は暗くなって、雨がしとしと降る音が聞こえた。