聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第4章 Confession of love /猗窩座
「知りたいか?美咲の過去。」
煙草の煙が揺れながら静かに上って消えていく。
「話しても問題ないのか?」
「いいや、お前だから話す。俺にとっても大事な過去だしな。」
表情から今から聞かされることが重いことだってわかる。俺の事信用してこの人は言うんだろうけど....。
「明日、またここに来い。そしたら教えてやる。今はアイツ笑顔にしてやってくれ。」
「はい....。」
帰り道、もう少し一緒にいたくてバーがある通りを抜け大通りに出るまでを歩いた。足が少しもつれてしまいそうなほど酔った美咲さんは、店を出た途端、少し虚ろに見えた。
「ごめんね。....あそこ行くと飲みすぎちゃうんだ....。」
「俺はいいです。美咲さん、いつもしっかりしてるから、そういうところ見れて嬉しいって思ってます。」
「座ちゃんが吐く言葉全部口説き文句に聞こえちゃう!」
「それは....狙ってる訳じゃなくて本心ですけどダメですか?」
「ほらぁ、そういうところ!真顔で言えちゃうんだもん。中途半端な顔立ちと声じゃ寒くしか聞こえないよ....」
「....中途半端じゃないって?」
こうやって俺の事褒めちぎってるのも、十分口説いてるって思ってしまうのはこの人にはわかってるのだろうか。
そして、突き詰めるように聞くと、いつもなら話を逸らしてしまうのに、今日は酒の酔いが強いせいかそんな気配はない。
「ど、どういうことでしょう!」
少し赤らみが増して恥ずかしがるのを見ていっぱい抱きしめたくなってしまう衝動が湧くけど我慢だ。
普段店から帰っていく後ろ姿は楽しそうなのに、どこか悲しみと痛みを背負ってるような切なげな笑顔に締め付けられそうになる。
「ほら、俺に捕まってください。少しよろけそうなので.....」
腕を差し出すと、少し躊躇ってこちらを見た。こう言ったのは、何かに縋りたそうな感じに思えたから。お酒のせいにして俺に捕まって欲しいって思ったからだ。
「うん...ありがとう。」
そう言って遠慮がちに腕を組んでくれたから
湧き上がる喜びを胸にしまい込んで
それ以上何も言わなくていいようにただ寄り添って歩いた。