聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第1章 PASSION
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「ねぇ、魘夢殿。それどこのメーカーの?カッコいいね♪」
「えぇ。このカメラはニコ〇のニューモデルでして、これでまた電車の写真を撮るのが休日の楽しみになりそうなんです。
童磨様のお陰で夢見心地でございます...。」
俺の趣味は、この業界にいる人間たちとは一風変わっていて電車オタクであるにもかかわらず、童磨様はよくそのお話を聞いてくださるし、いつもニコニコしてくださるのが心地よいお方です。
それなのに、童磨様からは一向にプライベートを話すことはなさらない。
他のホストや、スタッフに聞いても、それは俺だけじゃないらしく、プライベートが分厚いベールで包まれる謎多き人物なのです。
一度、こんな変わり者である俺をなぜ、専属にしたかと問いましたところ、「そんなの、どこか俺と似たようなところを感じて居心地がいいからさ。」とお答えになりました。
どこかにサイコパスを潜ませているような張り付けた笑みを見せるのは確かに俺も同じことを思っておりました。
そんな童磨様が最近、素を感じるような笑みを後部座席でされているのです。
何か怪しいですね?
ですが、俺はあくまでも仕事だけの関係であるこの人のプライベートは詮索しない主義なので、どのみち隠したりはぐらかしたりされるので、そっとこの方のご活躍をお祈りするだけなのでございます。
「今度、そのカメラで撮った写真を見せておくれよ♪魘夢殿の写真は素晴らしいからね。じゃぁ、俺行ってくるよ。今日もよろしくね!」
にこやかな表情で軽く手を振ってくださる。
俺はこの人のそういう気づかいみたいなものが心地よいのです。
車から降りて颯爽と白橡色の長髪を揺らしながら楽しそうにお店の中へ入っていく。
はぁ、今日もあの方のサポートを全力でさせていただける.....!
悦びの気持ちで口元が緩んでしまいます。
車を店の前から走らせながら、そんなことを考えておりました。