聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第2章 覚めない夢
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あれから3度目のクリスマスイブ。
海外契約を結んでから、会う時間が少なくなったのに、会う時は情熱的な逢瀬を繰り返し、信頼の糸をつないできた。それが叶うのも、心に正直な言葉と行動をお互いに心がけてたからだと思う。
あの日からずっと甘い夢は続き、今は現実だと受け止められるようになった。
今宵、聖夜のディナーはあの時と同じレストラン。
巌勝はわたしがプレゼントした腕時計を気に入ってくれて早速それを付けてくれている。
いつしなく、暖かい眼差しでわたしを見てくれてるのが凄く嬉しいの。
テーブルに置かれたシャンパンと次々と運ばれてくるコース料理。静かに言葉を紡ぎ合いながら穏やかな時間が過ぎていく。
「綾乃。」
「はい。」
呼ばれた瞬間、何かいつもと違うものを感じて思わず声が裏返りそうになる。
「4月から事業を起こす。お前にはそのことはもう詳しく話しているつもりだ。」
彼は年度が替わるタイミングで、今のホストクラブを卒業して独立する予定だという。場所に囚われないような働き方をするといって、軌道に乗れば今よりももっと会えるようになると。
その話をなぜいまするのか、話しの意図と先が読めず胸がざわつく。
「拠点は勿論日本にするが、綾乃にも月に数日程は必ず会いに行く。」
「うん......。」
「だから……」
そこまで言うと目を伏せて、どこか落ち着かないような緊張感を感じたのはどうしてだろう。
その先の言葉を待ちながら、巌勝を見つめていると
ふっと、何かを決めたような真剣な赤い瞳がこちらを見据え、その刹那ドクンと鼓動が大きく跳ねた。
「これからの生涯、私の帰るべき場所はお前がいるところにする。」
「……え?」
突然の言葉に頭が真っ白になり、思わず両手で口を隠し、急激に涙腺が燃えるように熱くなる。
「綾乃…」
そっと左手を取られて、男らしい親指がわたしの薬指を撫でた。
「ここに……綾乃のこれからの生涯飾るものは、私からの物でいいだろうか?」