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聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】

第2章 覚めない夢




快気祝いとイブのお祝いで、一見様お断りのレストランへ連れていかれる。個室のように区切られた部屋は彼が選ぶに申し分なく、出された料理はオシャレで美味しい。

お祝い事はいままでに何回かされても、プレゼントを渡すことに止まってそれ以上はなかったのに、あの日から甘い夢が覚めないようなふわふわとした現実味のない時間が続いていた。

互いのデザートが揃ったところでわたしの前に、わたしの目の前にワイン色の包装紙に包まれたものを差し出された。

「今までの詫びと、これからの約束だ。」
「そんな…!それはお互い様でしょ?」
「結果、追い詰めて体調を崩させた。」
「わたし、何にも用意してない…。」
「それはそうだろう。私がしたくてすることだ。気にする必要などない。」

そう言って念を押すように箱をわたしの方に進めてくる。

「受け取れ。」
「……ありがとう…。」

これ以上言わせても、引っ込めさせるのも悪い気がして、わたしはそれを受け取った。
開けてみろと促されてそれを開封したら、ルビーのピアスとお揃いのリング。そしてカードキーだ。
思っても見ない贈り物に溢れ出すモノが止まらなくなる。

「最近は泣いてばかりだな…。」
「だって…。」

「仕事以外の時は必ずつけろ。」
「はい。」

満たされていく心は見えるモノ全てを鮮やかに彩るようで、眩しく映った。
今のこの気持ちと、あなたの心が、してくれていることが現実ならばどうやってそれを確かめればいい?

渡されたプレゼントを早速つけると巌勝は優しく笑って「綺麗だ。」と言った。

帰り通。彼の車の中。イルミネーションは滲んで、過ぎ去る景色が今日しかない特別なものに映った。

彼の部屋に着くなり、深く酔うほどの口づけから、今までにないくらい熱く睦合った。
そこで、これは現実だと思いこまされても冷めない熱に狂い、周りなんてどうでもいいくらいの快感があることを知る。
視界を否応なしに占拠する鍛え抜かれた美体、あだめいた眉目秀麗な顔立ちに、わたしだけを映す瞳。
甘く紡がれる言葉が鼓膜を通しては、情愛の強い愛撫が全身の悦びで震わせる。
引き寄せられて隙間なく入って一つになれば、また心からの滾る熱で涙が溢れた。

全身に、心に、深く染みわたるように巌勝の愛に包まれて、もう本気で、このまま死んでもいいと思った。

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