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聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】

第2章 覚めない夢






彼の手の温度がいつもよりも暖かく、指先に触れる脈が心做しか速い気がした。
それ以上にわたしの鼓動も煩いほどで、全身が痺れを伴うように熱くなる。
今までの事が走馬灯のようになだれ込んで、涙が止まらなくなった。

「…………はい…。」

気の利いた事なんて言える余裕がなくて、絞り出すように口にした2文字の返事を返せば、彼のもう一方の手が重なって指先から冷たい感触が彼の温度と共に指の付け根へと通った。
あの時とはまた違った現実味のなさと言葉にならない思いが、新たな覚めない甘い夢へと誘うよう。

「綾乃は泣いてばかりだな…。」
「だって……」

3年前にもやったやり取りを思い出す。
仕方ないじゃない。こんなにカッコいい人がわたしを選んで愛してくれて生涯一緒にいる約束くれた。

彼らしい一等の贈り物がそこに眩いばかりの光を放って、これまでわたしたちが一緒に紡いできたものを彩り未来を照らすように思えた。


外に出れば今年最初の雪が舞う。
気温差に思わず身震いしては、悴む手は繋がれて巌勝のコートのポケットへと入れられた。
優しい眼差しに促されて車までの距離を歩き始める。



”覚めない夢”

現実だと受け止めきれないくらいの甘ったるい夢を見させられては、それが現実であると思えた頃に新しい夢を連れてくる。

聖夜に新たに更新された幸せな夢の先でも
愛する人と共にいれたらと願わずにはいられない。



end.




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