聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第2章 覚めない夢
*
眩しい光に重たい瞼をあけるけど、焦点が合わずぼんやりする。
見慣れない天井、規則正しくなる電子音、何かに拘束されているような感覚と、手に感じる暖かさ。それと大好きな香り…。
訳が分からず動けない。
少しずつ意識が覚醒してくると、天井を見上げる視界にあるもので病院だと分かる。酸素マスクもしているみたいで、呼吸をするとき音がする。
きっとわたしは倒れたんだ。部屋の中で。それを誰かが見つけて運んでくれた。
そしてわたしの左手を包む暖かいものが人のものだとわかると、ゆっくりとそちらに顔を向ける。手をつつんでくれているのが誰かと分かった瞬間、目が痛くなってジーンと涙が溜まっては溢れた。
「巌勝…。どうして...?」
そう呟いたとたん、彼の大きな体ががばりと起きてわたしを見た。
その眼も赤くて、唇に力が入っている。どうしてそんな表情をしてくれるの?わたしのために…。
「今まで…。悪かった…。寂しい思いを、いっぱいさせた......。」
今まで見たことない表情、思いつめていたように歪めて流れる涙に目が離せなかった。
「どうして……?お仕事は……?行かなきゃだめじゃない......。」
「俺の事ばかり気にしすぎだ......。こんなになるまで......。いなくなるのではと......。」
「ごめんなさい…。」
頬を大きな手が包んで、頭を撫でてくれる。わたしを見る目はあふれる涙が筋をつくって流れていく。
思いもしないこんなこと…。夢を見ているのかと思った。
「夢...なの?」
こんな幸せな時間、抱かれてるときくらいしか感じたことないのに…。
夢なら傷つかないうちに覚めて欲しい。胸が焼けるような、締め付けられるような痛みはどうしたらいいの?
本気でそう思ったのに、彼は驚いたように固まった…。
答えが欲しくて暫く見ていると、ばつが悪そうに目を反らしてしまった。
そして、
「鳴女…。アイツから、綾乃が倒れたと連絡が入り、その後俺もここにきていろいろ聞いた。
今までお前のやさしさに甘えて、何もしてこなかった…。夢じゃない。これが現実で、この醜態が俺の事実だ......。」