聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第2章 覚めない夢
市販の睡眠導入剤とか、マッサージ、ヨガ、いつもよりハードなジムのメニューをこなしてタイムスケジュールに注意しながら出来るだけ規則正しく生活する事でどうにか睡眠だけは改善した。
その甲斐あって、少しは疲れもとれて血色も良くなったけど、心は全然ついてこない。鳴女ちゃんもそれには気づいていて、わたしと合流するときは必ず液体のサプリを持ってきてくれる。わたしを笑わせるために
ギャグマンガとか漫才やコントの番組を見せてくれる。
そんな一生懸命にわたしを励まそう、元気づけようとしてくれるマネージャー兼友達のためにも頑張りたいって思ったし、何よりも周りに迷惑かけたくなかった。
そうして始まった撮影の日々。
時差もそこまでなく、気候も寒いより常夏の方が合うからか、海外ということもあって少しだけ開放的な気分にもなり気が楽になった。
撮影は順調に進んで、現地スタッフにもチヤホヤされながら、どうにか撮影に影響がないように振舞えし、そこそこ楽しかった。
7日後、現地慣れもしてきたところで、動画配信用の撮影にも取り掛かる。結局は少しでも休む時間、ひとりの時間があるとやっぱり巌勝の事ばかり考える。
見ないようにしていたプライベート用のスマホの電源を入れて、久しぶりの通知欄見て、忙しいのか何を考えてるのか彼からの連絡はなく、色々込み上げてきて涙が溢れる。
「わたしのこと...、どうして...。」
その時、ガチャリと戸が開いた音がして思わず入ってくる人に背を向けた。
「えーと、明日のスケ...。え...、綾乃ちゃん???」
入ってきたのは鳴女ちゃん。泣いてるのにすぐに気づいて驚いたのかプライベートで話すように駆け寄ってきた。
彼女は何もわたしに聞くことなどせずに、ずっと背中をさすってくれた。ちょっと離れてる時間もあったけど電話で話しているような感じから、いろんな関係者に連絡を取ってくれて、戻ってきた時は
「明日は気にせず休んでいいですよ。」
と言ってくれた。
「話したくなったら聞きますから。ね?」
その言葉と、今までの潰れてしまいそうな苦しさから、今話さないともうこんな機会もないとわたしは全てを話した。
全てを聞いた後、彼女は言う。
「どちらかが踏み出さないと何も変わらないのです。待ってても苦しいだけですよ」