聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第2章 覚めない夢
「綾乃さん、最近顔色が優れません。大丈夫ですか?」
前の月からマネージャーの鳴女ちゃん。同じ歳で密かにアニヲタだったこともあってすぐに打ち解けた。
「うーん、ちょっと最近あまり眠れてないの。顔に出ちゃってる?」
「えぇ。クマが心なしか濃くなった感じが.....。写真集の撮影が来月から控えてるので、ちゃんと眠れるようにしていきましょう?」
11月末、来週から2週間グアムでの撮影。帰国後もスケジュールが埋まってる。
加えて勢いに乗り出したばかりの動画配信とかいろいろ仕事が立てこんでいて正直睡眠時間も削っていた。
仕事が楽しかったし、やりたいこともやって充実してた。
巌勝のやることなすことは営業関連なのかと疑ったこともあるけど、そんなにわたしは通い詰めているワケでもなければ、営業と言えるほどお喋りはしないし、静かにただそこにいるだけ。
わたしの存在意義って何だろうと思っていた。
体の相性がいいだけのただのソレ
自分自身彼の事が大好きだったから、それでもいいと思ってはいた。だけど、とてつもなく虚しい気持ちになっていて、その虚無感を誤魔化すようにスケジュールを詰める日々。
でも、体は正直らしく疲労が溜まって、色々考えては悪い方に向いてしまい、眠れない日々が続いた。
彼のことは誰にも言ってない。だって、どのルートでお客さんに聞かれるか
、それが彼の迷惑になるんじゃないかって怖くて言えてもいない。
そもそも、好きになったのはホント一目惚れで、海外平均の身長の私よりも遥かに大きくて綺麗な黒髪、サングラスの向こう側の赤い瞳が神秘的だった。
「連絡先、教えてください」
って聞いたら、無表情だったけどあっさり教えてくれて、面食らった。ガード硬そうなのに不思議だって思ったら、「俺も興味あったから」って言われて有頂天になって喜んでたけど、彼がホストだって知った時、営業の一環なのかなって落胆したの。
それでも、連絡はよく返してくれて、声が聞きたいと言えば電話くれるし、会いたいと言えば会える日を作ってくれた。正直自分からばかりで巌勝の方からは一切ない。
客として見ないのなら体の相性?とも思うようになっても
それでも苦しいほど大好きだった。