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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第3章 場地さんの双子の姉がモテて困ります


「馬鹿なこと言ってないで、あんたは教室戻んなさい」
「へーへー。じゃあまた後でな、千冬ぅ」
「は、はい!」
「変な気起こすなよー」
「お、起こしませんから!」

 カラカラと軽快な笑い声を上げて教室を後にした場地さんを見送りつつ、隣にいる咲桜へチラリと視線を送る。大して気にもしていない様子の咲桜はご機嫌な様子で食べ損ねていた弁当を広げ、目をキラキラと輝かせていた。……腹減ってたんかな。いつもの大人びた感じではなく、年相応な咲桜の笑顔に俺の頬も自然と緩む。

「千冬ぅ、食べよ?」
「あ、はい!」
「あ。千冬ママの卵焼き食べたい」
「いいですよ」
「あーん」

 八重歯がしっかりと見えるくらい口を開けてこちらを上目遣いで見つめる咲桜。……えっっっろ。つーか、あーんとか可愛すぎるだろ。
 咲桜の要望に応えるべく、卵焼きを一口サイズに箸で切ってゆっくりと彼女の口元へと運ぶ。嬉しそうに卵焼きを口に入れた咲桜を見ながら、何だか雛鳥に餌をあげている親鳥の気分だ。

「おいし!」
「母ちゃんに言っときますね」
「うん! 今度作り方教えてほしいって言っといて」
「了解っス」
「卵焼きのお礼に唐揚げあげるね。はい、あーん」
「……あー」

 ん。と俺の口に唐揚げが放り込まれる。「いっぱい食べて大きくなるんだぞー」と言われ、思わず場地さんが少し前に言った言葉が俺の頭の中をフラッシュバックする。
 ……確かに、咲桜はデカイ。と思う。俺のクラスの女子よりはデカイ。

「なーに見てんの?」
「へっ!? あ、いや、その!」
「千冬も男の子だねえ」

 からかうような咲桜の言葉に、思わず顔が暑くなってくるのを感じる。たった一歳の年の差なのに、なんでこんな大人びてんの? いや、それとも俺がガキすぎるのか? なんだかんだ場地さんも大人びてるし……。
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