第3章 奇術師✖️ト✖️殺し屋
デート当日
遅めの朝食を食べた後、シャワーを浴びて髪を乾かしていた。
「ねぇ、あれ着て行くの?」
バスルームへ顔を覗かせた兄。
ソファの背もたれに流していたワンピースのことだろう。
「あ!お兄ちゃんおはよう! うん、あのワンピースまだ着たことなかったし」
ドライヤーのスイッチを消す。
「ちゃんとハンガーにかけておかなくていいの?皺になるよ。」
ピンクの容器に入ったヘアオイルに手を伸ばすと、イルミの手がそれを横取った
「あ、やめてよ、なにするの…」
「せっかくのデートなのに、皺になった服で行くの?ヒソカ、そういうとこ気付きそうだけど」
ヘアオイルを手に取りそのままネルルの髪に馴染ませて行く
「……!! す、すぐ着るから大丈夫…っ」
いつもと違う様子の兄に驚いたネルルは、顔を少し赤く染めながらパッと離れバスルームを出た。
「…まだオイル残ってたんだけど。」
手をひらひらと見せながら部屋へ戻ってくる
「もういいの!はやく着替えなくちゃ…。ここから門まで距離あるし、あんまり髪型崩したくないし…」
忙しくするフリをしてワンピースを着ながら兄の顔を見ないようにするが、そうはいかなかった。
後へ回り、髪の先に触れてきた
「っ! お、お兄ちゃん…?」
ぴくりと反応して振り向いてしまった
「なに?」
漆黒の瞳と目が合うが
「どうかした?」という顔をしている。
「なに?って、私のセリフなんだけど……」
「妹がはじめて男と2人で出かけるから、様子見に来ただけだけど、なにかおかしい?」
なにか問題でも?というふうに毛先にオイルを馴染ませるようにいじっている。
「……ううん。そんなことするのはじめてだからびっくりしただけだよ。」
声を小さくしてメイク道具を机へ並べる
「そう?………じゃ、外でまってるから。準備できたら出てきて。」
「わかった。」