第2章 ワタシ×ト×奇術師
イルミに伝えられた通り、ラウンジへ向い飲み物をする。
「わぁ…!」
大きな窓際のカウンター席に座ると、ヨークシンの街並みを一望できた。
「都会ってすごいなぁ」
実家がどれほど閉鎖的な空間であるかを再認識させられる。
もちろん地元では有名な暗殺一家で秘匿されてはいない。コソコソと隠れながら生活しているわけでもないが、弥生の自室には窓というものがなかった。
標高の高いところに建っているというのに、部屋から外を眺めるなんてことは生まれて一度も無かった。
…ポロンッ!
メールの受信音だ。ボーっと外を眺めていた顔をスマートフォンに向けると、弟のキルアからメッセージが届いていた。
[どこ行ってんの?出かけてんなら帰りに限定のチョコロボくん買ってきて!ネットで買えないからさ。よろしく!]
キルは仕事がもらえるんだから自分でかえばいいのに…
と頭では思いながらも
[了解]と送信ボタンを押した。
思い返せば、いや、思い返さなくとも、自分より弟のキルアのほうが仕事の依頼が回ってくることが多かった。
同じ銀髪と、同じ瞳の色をした自分のほうが先に生まれたのに…だ。
自分は女だから、両親もイルミも可愛がっているつもりで外に出さないんだろうと、そう思っていた時期もあった。
それでも弟が自分より仕事を与えてもらっているのをみるのは羨ましい。
両親に自分も仕事が欲しいと、1人で行かせて欲しいとねだったこともある。だが、その答えはいつも決まって「お前にはまだ早い」…と。
だから自分の仕事は、両親やイルミのサポートとしてついていくものがほとんどだった。