第4章 指輪
地元名産の石材で作られた昭和初期の豪華な建物で、この御涌野温泉では有名な観光名所だ。
大きなステンドグラスと、立派なシャンデリア、当時は貴重なガラスがふんだんに使われた、豪壮な作りの教会…。
入り口でその荘厳さに圧倒されていると、健吾さんが私の右手を握ってくれて、手をつなぎながら一番奥に向けてゆっくり歩く。
「一番奥の、十字架があって、一般人立入禁止で神父が立つところをチャセルって言うらしいですよ。それで、あのバラ窓は…」
パイプオルガン、大きなバラ窓、十字架のレリーフ…。
健吾さんの解説付きで見ていると、どれもこの温泉街が昔から賑わっていたことを偲ばせる由緒のあるもののようだ。
祭壇の手前まで来たところで、健吾さんが私の手をきゅっと握る。
「志保さん、ここで、結婚式をしてくれませんか」