第5章 ☆これも悪くない。((千冬
私の彼氏はよく喧嘩をする。
正直言うと心配だからやめてほしいと思うけど、その世界でしか学べないこともあると思うとなかなか「やめて」とは言えなかった。
―ピンポーン
インターホンが私が来たことを家主に知らせる。
「はーい?」
出てきたのは彼氏の千冬だ。
「また喧嘩したんだって!?」
「お、さん!!上がって。」
「もぅ…」
私の顔を見て上機嫌になる彼氏を目にして、私の怒りのボルテージは一気に下がってしまう。
だって、千冬可愛い。
「手、大丈夫なの?」
なんとまぁ、千冬は喧嘩で右手首を折ってしまったというのだ。
「んーまぁ、利き手だから不便っスけど。」
千冬はぐるぐると包帯の巻かれた右手を私に見せてきた。
包帯を巻かれていても、なんだか痛々しく感じる。
「これ、飲み物買ってきたからよかったら飲んで!」
「お、俺が好きなやつ!」
買ってきた飲み物のキャップを開けて渡すと、嬉しそうに喉に通していた。
その姿を見て満足するだけにすればよかったんだ。
なのに…
「何か、私にできることある?何でも言って!」
…なんて言ってしまったから…