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桜月夜【鬼滅の刃】

第7章 なんとなくの正体


月城は日々よく頑張っている。鍛錬だけではなく、食事の仕度や掃除、洗濯となんでもそつなくこなした。
ただ、呼吸の上達には正直伸び悩んでいる。炎の呼吸の型も教えてはいるが、まだまだ筋肉量も足りていない。下半身の筋肉に神経を集中させることが基本であるために、一度に取り入れる酸素も多くなければならない。だが、彼女は一度に取り込む酸素量が人より少ない。
これは正直、かなり厳しい。継子としては力不足か。だが万が一にも炎の呼吸を月城が習得できなかったとしても、彼女のもつ正確な刀の軌道や、類まれなる勘はこれまでも戦いにおいて十二分に役に立っている。きっと、素晴らしい剣士になれる。
俺は、庭で静かに素振りを続ける月城の後ろ姿を眺めて思った。あれほど静かに稽古をする人は他に居なかった。彼女の癖だと思うが時々、わざと呼吸を小さくしている。その方が長く身体が動くのだ。全集中の呼吸法としては正しくはないが、月城の人より弱った肺を酷使するには必要なことかもしれないと思うようになった。

「よし!そのへんにして、休憩だ!」

月城は額の汗を拭って振り向いた。朝から走り込みと、腹筋や屈伸運動を200回ずつさせているが、以前に比べれば表情に余裕が見える。
月城は縁側の俺の座る隣へ来て腰掛けた。それから手拭いで手を拭き、用意していたお茶を湯呑に注ぐ。

「どうぞ、杏寿郎さん。」

「うむ、ありがとう!」

月城はお茶を一口飲むとはぁと息を吐いた。今日は彼女が滞在して7日目。俺が家にいたのは初日と今日だけで、あとは任務に出ていた。

「月城。千寿郎はどうしていた?」

「千寿郎さん…あっ!そうだ!聞いてくださいませ杏寿郎さん!」

月城は珍しく前のめりになって、大きな双眸を青々と輝かせていた。話を聞くと、

「杏寿郎さんが任務の間は…」

月城は順を追って話した。早朝に鍛錬をしてから二人で朝餉の準備をして千寿郎は学校へ。それから洗濯や掃除をし、昼餉をとって、午後の鍛錬は千寿郎と共にやるのだそうだ。千寿郎の宿題が多い日は、月城が夕餉の準備をしたり、一緒に宿題をみたりしたとか。

「楽しくやっているなら良かった!いつもは父上と二人きりなので、俺も少しばかり心配だったのだが…」
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