第6章 約束
目が覚めると私は布団で眠っていた。自分の家ではない。寝惚けた頭を少しずつ回して昨日のことを思い出す。
任務を終えた後は…。身体を起こして部屋を見渡すと、私の革の鞄があった。そうだ、泊まりで稽古…朝から…。障子の向こうは明るい。もう朝だ。
私はまさに布団から飛び出した。ああ隊服を着たまま!汚れているのに!そもそもどうやって寝たのかしら。走っている最中、具合が悪くなって…途中から覚えていない。
兎に角、鞄を開けて持ってきた道着に着替える。修行中に来ていたものだから、擦れているしあまり綺麗ではないけれど。髪も結い直して部屋を出ると、広いお庭が視界いっぱいに広がっている。桜の木がたくさんあって、満開になっていた。太陽はもう高いところにある。居間へ行くより道場へ行くほうがいいかしら。私は先に道場を見に行ったが閉まっていた。杏寿郎さん、もう起きて鍛錬されたのかしら。怒っていたらどうしましょう…。いえあの方は怒るなんてそうそうないのだけど、がっかりさせてしまったやもしれない。
引き返して居間に向かう途中、杏寿郎さんが向こうからやってきた。鼓動が早まる。
「おはよう!月城!よく眠れたか?」
杏寿郎さんは道着姿で、いつもとかわらず明るい声色で挨拶してくださった。
「おはようございます。寝坊してしまい申し訳ございません!」
私は深く頭を下げた。
「疲れていたんだろう。一度起こしに行ったんだが、声をかけても揺すっても起きなくてな!」
「うっ…申し訳ございません…。」
「昨晩、気絶するように突然眠ってしまったから、余程疲れが溜まっていたんだろう。」
「もしかして、運んでいただいて私は布団で眠っていたのですか?」
「あぁ。靴は脱がせてたたきに置いておいたぞ!」
「本当に申し訳ございません。お世話をかけました。」
私はその場に正座し三つ指をついてお詫びした。杏寿郎さんは慌てて私を立たせるが、申し訳なさからお顔が見れなかった。
「そう気にするな!休むこともまた必要だ!」
「ありがとうございます。お陰様でぐっすり眠りましたので回復しました。」
「それはよかった!さぁ、湯浴みをして朝餉をとってきなさい。千寿郎が準備している。」
ああ、なんて有難い。私はもう一度お礼をして、居間へ急いだ。そこに千寿郎さんは居なかったが朝餉の仕度がされていた。
