第5章 造船所の鬼
「月城ー!」
まだ少し遠くにいてフラフラと走っている月城に呼びかけた。
ぜぇーヒュー…ぜぇーヒュー…
今にも死にそうな顔をしているし、呼吸の音もおかしい。俺を見失うまいと死物狂いでついてきただろう。そして糸が切れるように意識を失ってしまい、倒れそうになったので受け止めた。
無事に到着して安心したのか眠ってしまったようだ。
俺は月城を抱きかかえて鞄を持ち、通用口から家に入った。
庭から回って縁側で草履を脱ぎ、そのまま客間へ。鞄を床に置いてから月城をゆっくり下ろした。気絶しているかのように深く眠っている。
押入れから布団を下ろし、整えてから月城を再び抱えてその上に下ろし、革靴も脱がせた。
「おやすみ。」
布団を掛けて、俺は静かに部屋を出た。