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桜月夜【鬼滅の刃】

第5章 造船所の鬼


目が覚めると辺りは暗くなっていた。間もなく太陽が完全に沈む。そういう時間帯に目が覚めるのは、俺にとってごく自然なことでもあった。
そろそろ行くか。
顔を上げると月城が布団の上で身体を縮めて眠っていた。
布団は部屋の壁際にあり、俺はその反対側の壁に背をつけていた。だが小さな部屋なので距離はない。
弟子とはいえ、嫁入り前の女性の部屋に仮眠のため上がらせてもらうのはいかがなものかと思ったが、任務の前に少しでも休んでおきたかったので、今回は甘えさせてもらった。申し訳ない、このまま黙って部屋を出ようか。そう思ったが、彼女の寝顔。よく見ると泣いている。静かに涙が流れている。辛い夢でも見ているのだろうか。

「月城、起きろ。」

肩を軽く揺すると月城はゆっくり目を開けた。

「はい…。」

顔は眠そうなものの、すぐに身体をゆっくりと起こした。

「起きました。」

だが目頭から鼻の脇にかけて涙が伝っていったので指先で拭っていた。

「大丈夫か?」

月城は眠そうな顔で俺を見た。そして少ししてから意味を理解したようで、大丈夫です、と言っていた。

「そうか…。では俺は行く!」

「はい。」

そういえば紙袋に食べ物が入ったままだが、これは置いていくとしよう。俺は日輪刀を持って立ち上がり、草履を履こうとしたとき。外から鎹鴉が窓をつついた。要ではない。伝令の鴉だ。
月城が窓を開けて、鎹鴉が止まりやすいように腕を差し出した。鎹鴉は喋りながら止まった。


『カァー!月城リアネ、炎柱ト共ニ、町ノ造船所へ向エ!作業員ノ不審死ガ相次イデイルー!』

俺は草鞋を履いたところで振り返った。

「承知しました。」

月城が返事すると鎹鴉はすぐに飛び去った。変わりに彼女の梟が肩に止まった。

「杏寿郎さん。」

「うむ!共に行こう!」

俺たちは報告にあった造船所へと向かった。
屋台の道を通り、港に出てから海沿いに進むと目的の場所はあった。ドックには貿易船と思われる大きな船が入っている。その奥には赤レンガで出来た製鉄所。敷地が広いな。まずは報告のあった壱号ドックから弐号ドックを見てみるか。
広いので手分けして注意深く見て回った。何かあれば大声で呼べば聞こえる距離だ。離れても問題はないだろう。
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