第4章 元町観光
「すまんが、君の家で仮眠をさせてもらえないだろうか!」
「…え?」
なんですって!我が家は何もないのですよ!!
「…私の部屋は何もないので、おもてなしできるものが…」
「気を遣ってもらわずとも構わない!」
「そうですか…。」
掃除もしていないし、恥ずかしいけど仕方ないですね。
私は杏寿郎さんを部屋まで案内した。
玄関は靴を脱がないで上がっていただき、階段を登って二階の一番奥が私の部屋だ。戸の鍵を開けて中へ入る。靴はここで脱ぐ。
「本当に狭く何もないのでお恥ずかしいですが…」
「お邪魔します!」
杏寿郎さんは草履を脱いで振り返り、手で揃えて端へ寄せていた。それから部屋を見渡していた。
「几帳面だな。随分片付いている。」
「あまり見ないでください…」
私はがガラス瓶を小さな机に置いて、日輪刀をいつもの場所である布団の枕元に置いた。
「よろしければ布団を使ってくださいな。」
「ありがとう!だが結構!俺はここで眠るとしよう!」
そう言って窓際の壁に寄りかかって胡座をかき、紙袋と日輪刀は直ぐ横に置いた。
「体が痛くなりませんか?」
「大丈夫だ!月城も休めるうちに休んでおけ。」
杏寿郎さんは腕組みすると目を瞑ってすぐ眠りについてしまった。静かな息遣いだけが聞こえる。寝るときまでせっかちですね。でも私もあまり眠れていないので、遠慮なく休ませてもらうことにする。
部屋に自分以外の人がいることが気にはなるが、布団の上で横になってしまえば、眠るまではあっという間だった。
うわああああん!
あぁ。
誰か、とてつもなく大きな声で泣いている。
わぁぁぁあああん!!!
どうしたのでしょう、そんなに泣いて。
声は近くで聞こえるのによく見えない。白っぽくぼんやりとして、まるで曇ガラスを通した景色のよう。
その向こうに誰か立っている。黒い着物を着ているあれは、お父様だ。
ああ、それなら、この大声で泣いているのは私だ…。
涙で目の前が曇って見えているんだ、確かそうだった。このあと、もう一人、男の人が来て何かを話していって、お父様も泣いて私を抱き締めた。
お父様、あの人は何て言ったの?