第19章 黎明のその先へ【END2】
そうか、それなら…
「俺が決めよう!」
「え…?」
困惑する月城を真っ直ぐ見つめる。
「君はどんな答えを選んでも、間違ったことは何一つ起きない!」
「!?」
「さぁ、どちらを選んでも大丈夫だ!」
「そ、そんな…」
まだ迷っているな。
人間ならば、時は有限だ。
故に幾度と選択を迫られる。
その時はよしと決めたことも、後になって後悔することもある。
だが、それも含めて人生だ。良い事ばかりでもなく、悪いことばかりでもない。
「月城…」
困り果てる彼女に呼びかける。
なるべく追い詰めることのないように優しく…。
「大丈夫だ。俺に気を遣うこともしなくていい。自分の思うがまま、心の声の通りにすればいい。」
月城は俯いて暫く黙ったままでいた。
だが決心がついたように顔をあげると目を合わせてきて…
「私…杏寿郎さんと一緒に居たい…。お傍に…居てもいいでしょうか?」
まだどこか不安気な震える声でそう言った。
俺は自然と彼女を引き寄せて抱きしめていた。流れる稲穂色の髪を撫でた。柔らかくてさらさらとしていて、息を吸うと月城の匂いがする。心の底から安心した。
「よく決めたな…」
抱きしめる腕に力を込める。
もう絶対に離したくはない。
どれだけこの日を待ち侘びただろう。
こうして触れるだけで今までの心配事は全て吹き飛んだ。
ゆっくり髪を撫でてやると、彼女も安心しているのか体を預けてきた。
そうやって少しの間、抱き合っていた。
温もりと香りが眠気にも似た安堵感を連れてくる。
もっと気持ちを確かめたいと思った。
顔を近づけ、敢えて至近距離で見つめる。と、彼女の方も俺をじっと見つめ返した。
白い頬に手を添える。
「君の目は…いつ見てもきれいだな。」
どこまでも澄み渡る青空のようだ。
「あなたの目は、輝く太陽のようにきれいですよ。」
月城の手が俺の頬に添えられた。
お互いになんとなく微笑み合って、どちらからでもなく唇を重ねた。
触れたところから全身へと、何か心地良い感覚が走った。
痺れるような、だが温かい。