第3章 呪いの藁人形
隊士にも得手不得手は様々だ。戦えば強くとも、一般人への聞き込みは苦手な者もいる。
闇雲に聞いて回っても返って良くない。どういう人物に聞くとよいか、潜入が必要な場合の策はどうするか、辿るべき痕跡は何か。そういったものも少しずつ教えていった。
拠点から北東に位置する小さな村では、数日で子供が数人消えたという。
両親からの聞き込みは終えているが、決まって目を離した隙の出来事で誰も何も見ていない。
該当の家からは微かに鬼の気配はある。
「確か、三日おきに消えたと言っていたな。」
「はい。最後の子供が消えてから今日は三日目です。」
若い隊士が言った。
「うむ。今夜、方を付けよう。」
陽が沈むのを待ち、身を潜めた。派遣した隊士は二人。暗くなってからは手分けして村を巡視した。
子供が消えたとされる時間に一貫性はなかった。ひたすらに待つしかない。
その間に他の場所は任務を完遂したところもあった。
と、急に要が鳴いた。
他の隊士の鎹鴉が飛んできたからだ。
『鬼ダ!鬼ダ!北ノ林!コッチニ向カッテクル!』
村の北側は隊士に待機させている。彼の鴉だ。
俺も直ぐに向った。明かりの少ない村だが道は直線だ。走りやすいがそれはあちらも同じこと。
村の北口が見えたが隊士はいなかった。林の中へ入ったか。
そのまま真っ直ぐに突き進むと、待機させていた隊士の背が見えた。刀を構えている、鬼がいる。鬼は直ぐ視界に入った。高く飛び、隊士に飛びかかろうとしている。
この距離なら間に合う。
炎の呼吸 壱ノ型…
「押し通ります!」
瞬間、女声と暗がりに白銀の一閃。鬼の首が飛んだ。
崩れる鬼の後ろから見覚えのある姿が、隊士の頭上を越えて俺の前で着地した。
「月城!」
「あぁ、炎柱様こんばんは!」
驚いた、こんなところで再会するとは。相変わらず呼吸は乱れているが見事な一閃。
「任務か?」
「はい!隣の野山に出た鬼を追ってきました。」
ということは、あの村で騒ぎになった鬼ではないのか。
それに彼女の態度。いつもより慌てている。林の奥を見やる。妙な気配がする。
「炎柱様、逃げましょう。途中で妙な化け物に追われましたので、追いつかれてしまいます。」
月城は刀を鞘にしまい、逃げる体勢だ。
「逃げるな!鬼でなくとも人々を脅かすものは倒す!」
「でも…」