第3章 呪いの藁人形
ー 炎柱様。先日はご指導ご鞭撻いただきありがとうございました。
また、一宿一飯までお世話になりましたこと、心より感謝申し上げます。
炎柱様が任務に出られた後、お父上様にもご挨拶いたしました。
千寿郎さんと三人で食卓を囲み、会話はありませんでしたが充実した時間を過ごさせていただきました。
千寿郎さんは、本当に良い子ですね。またお会いできるのが楽しみです。
住み込みの件についてですが、もう少し考えさせてください。
今は借家に住んでおり、長くあけるわけにもいかず、大家さんと話し合いをしております。ー
とある小さな村の宿。
俺は鎹梟より受け取った手紙を読み終え、隊服の胸ポケットにしまった。
あれから三日。まだ家には帰れていない。
「すぐに返事を書くから少し待っていてくれるか。」
彼女の梟は眠そうに目を瞑った。
窓の柵に止まったまま、後頭部は高く登った陽光を浴びて暑いだろうに。
ー月城殿。
手紙をありがとう。
有意義な時間が過ごせたようで良かった。
それにしても父上が共に食事をするとは。近頃、千寿郎からは部屋で食事をとることが多いと聞いていたから驚いた。君がきてくれて良かった。
千寿郎のことも、本当の弟のように可愛がってくれて感謝する。俺は家に頻繁には戻れない為、君が時々様子を見てくれると有り難い。
住み込みの件だが、こちらはいつでも歓迎する。返事はいつであっても構わない。待っている。
ー
墨を乾かし、折り畳んで梟の足に結んだ。
梟はまだ眠そうにしていた。
「頼んだぞ。」
梟は一つ鳴くと静かに羽ばたいて空の彼方へ消えていった。
月城は今、任務だろうか。休みの間も稽古に励んでいるだろうか。その事も書けばよかったが、まぁあまりしつこく言い過ぎるのも良くないだろう。
次に暇をもらうときにまた手紙を出せばよい。
俺は今、この宿を拠点に多方面の任務に指示を出している。
複数の鬼の報告があり、それぞれの場所に隊士を派遣し、その報告を待っているところだ。もちろん、十二鬼月などの手が負えぬ相手の場合は俺が行く。そのために、それぞれの派遣先からちょうど中間地点に待機していた。
今回は七ヶ所。内二箇所は昨日までに片付いた。
残りの五ヶ所もそう時間はかかるまい。
が、どうやら北東に派遣した隊士たちの調査が難航しているようだ。現場の様子を見に行くとしよう!
